最近よく聞くゲリラ豪雨、
一般に定着した集中豪雨という言葉。
実は気象庁はこれらの言葉を通常、使っていません。
マスメディアが使い始めたこれらの言葉の意味や由来、
正確には違いはあるのか?
英語で表現できるのか?
普段、見聞きする「集中豪雨」という言葉について、
記してみまます。
集中豪雨とは?
そもそも、「集中豪雨」という言葉はいつから使われ始めたのか?
1953年(昭和28)、8月15日付けの朝日新聞(大阪本社版)夕刊の見出し、
「集中豪雨 木津川上流に」
これが「集中豪雨」という用語が使われた最初なのだとか。
8月14日に京都府南山城の木津川上流で大雨が降り、死者・行方不明者が436人に及ぶ大災害がありました。
南山城水害(南山城豪雨)で、計5676戸の住宅被害と1702人に人的被害を及ぼしました。
見出しに続き「寒冷前線は激しい雷と豪雨を伴って京都・滋賀・奈良府県境に当たる木津川上流に集中豪雨を降らせ」と記事にあります。
昭和の時代は、朝日新聞に一定の影響力があったので他の新聞や人々も追随したのでしょう。
その後、世間一般に定着しました。
一方、平凡社の世界大百科事典によると、1958年(昭和33)島根県浜田市付近の大雨を集中豪雨と報じた新聞が最初だとあります。
では、新聞発で名付けられた集中豪雨とは一般的にどう定義するのか。
「集中豪雨」は、局地的かつ短時間に集中して降る雨のこと。
以上が、意味するところです。
インパクトがあって視覚化できそうな言葉ですよね。
新聞の見出しで読者にわかりやすく想像できるよう、上手く作られた造語です。
ただ、何ミリ降ると集中豪雨といった定量的な定義はありません。
気象庁は、「集中豪雨」という言葉を気象用語として頻繁に使いませんが半世紀にわたって使われてきた言葉なので使い方を示唆・提示してくれています。
「同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨。」
積乱雲が同じ場所で発生し、発達した雨雲によって重大な災害を起こす場合に「集中豪雨」を使うそうです。
では、集中豪雨の「豪雨」とは何か?
こちらは、使用する用例や目安が気象庁にあります。
ただ、「豪雨」は単独では使わず〇〇豪雨と命名して使います。
「豪雨とは著しい災害が発生した顕著な大雨現象」
著しい災害とは、激甚災害、命名された大雨災害。
既に命名された現象(ex,東海豪雨)もしくはそれに匹敵する過去事象に対する使用に限定。
命名の目安は「浸水家屋10000棟」等。
〇〇豪雨と集中豪雨が別物だということがわかりましたね。
次章では、集中豪雨に似た言葉の違いや別称などについて記します。
集中豪雨とゲリラ豪雨、夕立との違い
最近、よく聞く「ゲリラ豪雨」という言葉。
1960年代後半頃には、専門家の間で使われだした言葉らしいのですが世間一般に浸透したのは2008年のマスメディアからだとされます。
平成20年(2008)は、局所的な大雨によって日本各地に甚大な被害を及ぼしました。
突発的でごく狭い範囲に50mmを越える時間雨量が発生する現象が頻発し死者も出たことからニュースになり「ゲリラ豪雨」という言葉がよく使われるようになりました。
50ミリを越える雨量とは、予報用語で「非常に激しい雨」を指します。
30以上から50未満が、バケツをひっくり返したような「激しい雨」です。
50ミリ以上から80ミリ未満は、滝のように降る「非常に激しい雨」なので、傘が全く役にたたなくなり車の運転が危険とされ、地下室や地下街に雨水が流れ込み、マンホールから水が噴出し、土石流が起こりやすく、災害が発生するくらいの雨のことです。
今のところ、気象庁では正式に採用されず「ゲリラ豪雨」の正確な定義はありません。
ゲリラ豪雨は、「集中豪雨」や「局地的大雨」と言い換えられます。
「局所的大雨」は気象庁によると、以下に定義されています。
急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨。
「局地的な大雨」とも言う。
名前はどうであれ、年々50ミリ以上の「局所的な大雨」~ゲリラ豪雨が増えていることは確かです。
予報の精度は上がっているものの、危険性は増すばかり。
対策としては、予報で各自が予見して安全な場所に移動するなどして回避することです。
その場合、頼りになるワードが『高解像度降水ナウキャスト』です。
気象庁のサイト内に「高解像度降水ナウ」という雨雲画像をリアルタイムでチェックできるツールがありますし、アプリも存在します。
活用することをオススメします。
「ゲリラ豪雨」の正確な定義はないので、違いとなると明確には言えないのですが、「局地的大雨」や「集中豪雨」の一形態として含まれる言葉だと考えられます。
一方で、「夕立」とは?
こちらの言葉は、特に夏季の雨に用いられます。
夕立は、文学的色彩を帯びる言葉で「夕涼み」や「夕暮れ」など気象を表現する言葉ですが人によって印象が変わる言葉でもありますよね。
気象庁では、積極的には使わず予報用語でもないようで「夕立」単体では使わないそうです。
「夕立に雨」といった使い方はあるかもですが、「夕立による災害」なんて聞いたことないですもんね。
よって、集中豪雨と夕立は同じ言葉として使われません。
災害の有無で使い方の「違い」が出て来る言葉だと結論できます。
集中豪雨とは英語で何と言うか?
集中豪雨やゲリラ豪雨を英語で何と訳すか。
集中豪雨は、新聞由来の造語なので英語で似た言葉か置き換わる言葉を探すことに。
「a heavy rain」とか、「土砂降り」と和訳される「Cloudburst」が相当すると思っていたのだが・・・。
アルクさんの英辞郎on the Webによると、
concentrated downpour
concentrated heavy rain
(゚Д゚)ハァ?
ホントかなぁ?
以下の訳語だと納得できるのですがconcentratedって直訳すぎでは?
local downpour
localized torrential rain
torrential rain [shower, downpour]
torrential rainfall
severe rainfallとも言い換えが出来そうです。
localは、局地的な。
downpourは、土砂降り、短期的な雨の意味。
torrentialは、激しい、急流の~。
torrential rainは、豪雨と訳せます。
severeは、ひどい、重いの意味。
ゲリラ豪雨も上の集中豪雨で使った訳語が相応しいと思います。
日本人が「Guerrilla rainstorm」とかいう言葉を使ってるぞ!?
と、ごく一部では知られ始めてウィキペディア英語版にも載っていますが・・・通じないと思います。
集中豪雨のまとめ
気象庁が使う定義済みの気象用語とは別に、マスメディアが使い始めて一般に流布した「集中豪雨」や「ゲリラ豪雨」。
昔ながらの日本人が用いてきた「夕立」。
それぞれの意味を記してみました。
お天気アナウンサーやメディアがそれぞれの言葉を独自判断で混同して使ってしまうので、皆が混乱してしまうのかもしれません。
以上が、「局地的大雨」こと「集中豪雨」と「ゲリラ豪雨」の言葉の意味のお話でした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。