「耳ざわりのいい」という言葉。
この新しい言葉は、誤用ではない。
そう言われるくらい、普及・定着してきています。
「耳障り」か「耳触り」か。
意味と違いをみていきます。
言い換えはあるのか、
反対語や類語は何かをまとめて記しておきました。
耳ざわりの良いは、あなたにとって耳障り?
「耳ざわり」の字は「障り」or「触り」?
最近は、良い意味でも悪い意味でも使う
「みみざわり」という言葉。
どっちの漢字を当てるのが正しいのか。
また、「耳障り」、「耳触り」とはどういう意味か?
辞書を調べると・・・
「角川 必携 国語辞典」(角川書店)
みみざわり【耳障り】聞いて不快になったり、うるさく感じたりするようす。
「-な音」「-な発言」「広辞苑 第5版」(岩波書店)
みみざわり【耳障り】聞いていやな感じがすること。
聞いて気にさわること。「-な話」「-な雑音」「障」は、妨(さまた)げになる。差し支える。邪魔。
こういった意味があります。
ですから、耳ざわりは、不快でいやな感じになります。
明治・大正期の文豪、森鴎外の文章から例示してみましょう。
信仰のない私には、どうも聞き慣れる漢語や、新しい詩人の用いる
ような新しい手爾遠波(てにおは)が耳障りになってならない。
余興 森鴎外
現在でいう、「うざったい」「うざい」という意味でしょうか。
文章では、「不快」になった、「気にさわった」という意味の使い方です。
それでは、「耳ざわりが良い音」など良い意味で使わるケース。
「耳触り」の語は辞書にあるのか?
「goo辞書」
みみ-ざわり【耳触り】
聞いたときの感じ・印象。「耳触りのよい音楽」「大辞林 第3版」(三省堂)
みみざわり 【耳触り】 聞いた時の感じ。
みみざわり 【耳障り】 [形動] 聞いて不快感またはうるさく感ずるさま。
耳触りの表記もみつかりました。
平成も10年代の辞書だと、「耳触り」の語はありますね。
まとめると、こうなります。
「耳触り」とは、聞いたときの感じ。
耳ざわりの良い音は「誤用」ではないの?
もともと、「耳ざわりのよい」といった肯定的な意味では
使いませんでした。
ですから、誤用でした。
本来の使い方は「耳障り」「目障り」といった、
「障」りを用いた言葉。
いやな感じや不快を示す言葉です。
「耳障り」という表現は、江戸時代からあるようです。
また、「耳触り」という表現は平成からですが、
漢字の表記は大正時代にも散見されます。
沼南の傍若無人の高笑いや夫人のヒッヒッと擽(くす)ぐられるような笑いが
余り耳触りになるので、「百姓、静かにしろ」と罵声を浴びせ掛けられた。
三十年前の島田沼南 内田魯庵
1923年頃の作品ですが、意味合いは「耳触り」で使われています。
・手触り、肌触り、舌触り、歯触り。
これらの言葉と同じ意味で「耳触り」が使われるようになりました。
NHKことばのハンドブックによると、
「耳ざわりがいい」といった言い方を「おかしい」と答える人の割合が
半分以下になったのが、1992年(平成4年)からだそうです。
間違い言葉ですが、徐々に世間で許容されて辞書にまで載るまでに。
「耳障り」の反対語は「耳触り」??類語は何?
耳障りの反対語
「耳触り」の意味は、聞いていて不快・うるさい・嫌。
その反対語は、聞いていて心地よい、耳にいい、聞こえ良い。
~「耳触りのいい」と同じ意味ですね。
「耳に快い」「耳に心地よい」が耳の字のつく、
耳障りの「反対語」でしょうか。
公式な反対語はないようです。
「耳ざわりのいい」の類語・言い換え
逆に、「耳に快い」「耳に心地よい」は
「耳ざわりのいい」の言い換えになりますね。
「口当たりがいい」と同じ使い方で、
「耳あたりがいい」と言い換えも可能かも(少し強引ですが)
「耳通りがいい」「耳ざわりのいい(良い)」とも言えますね。
また、「耳ざわりのいい」には、否定的な意味も含まれます。
~お世辞、社交辞令、ゴマすり、ベタ褒めなどです。
「耳障り」と反対の意味では、聞いていて気持ちいい
耳寄り 清閑(せいかん) 小気味よい 爽やか 気持ちいい ひそやか しめやか
爽快
こういった言葉も候補にあがります。
「耳触り」がよい~聞いていて心地よいという意味。
ですので、耳障りと反対の意味になりますね。
整理してみましょう。
耳障り | 耳触りのいい(良い) | |
言い換え | 耳につく 聞き苦しい 聞くに堪えない | 耳に心地よい 耳に快い 耳あたりがいい 耳通りがいい |
反対語 | 耳に心地よい 耳に快い 耳寄り 清閑(せいかん) 小気味よい 爽やか 気持ちいい ひそやか しめやか 爽快 | 耳触り 不快音 聞いた時の感じが悪い (率直、あけすけ、きっぱり、単刀直入) |
類語 | うざい うるさい 騒々しい 雑音 | 快音 美音 好音 甘美 調子のいい 美辞麗句 お世辞 おべっか |
まとめ
「耳ざわり」に関しての意味や類語、
反対語についてみてきました。
「耳ざわりのいい」は、もはや「誤用」とは言い切れない、
普及・定着した言葉になりましたね。
ただ、「なにか変」「おかしいよ」と感じる人もおられます。
正しい言葉とは言い切れない~
人によっては、耳障りな言葉なのかもしれません。
以上、耳ざわりについてでした。