神さまの名前。
土地の名前。
人の名前。
私たちが慣れ親しんでいる
「竜」と「龍」
意味に違いはあったのか。
漢字はなぜ2種類あるのか。
日本の龍(竜)と言えば?
ドラゴンは龍か竜か?
こういった疑問について書いております。
「竜」と「龍」の違いはあるの?
「竜」と「龍」に意味の違いはありません。
同じ意味です。
また、「竜」を「龍」と書いても良いし、
逆に「龍」を「竜」とも書いて良いのです。
ただし、「竜と龍」はいつからか皆が勝手に
イメージを付けて使い分けられている漢字です。
西洋系、東洋系、恐竜、聖獣などなど。
人によって主張もバラバラ。
後で日本人が持つ「竜と龍」のイメージを
紹介するとして。
まずは、「竜(龍)」本来の意味や漢字を
見ていきましょう。
「竜」と「龍」の漢字と意味
竜 | 龍 | |
訓読み | たつ | |
音読み | りゅう りょう りん | |
部首 | 龍 竜(りゅう・たつ) | |
画数 | 10画 | 16画 |
意味 | たつ。りゅう。大蛇に似た想像上の動物。 | |
天子に関すること、たとえ。 | ||
ドラゴン。 | ||
将棋のコマ。 | ||
種別 | 常用漢字 | 人名用漢字 |
〈解字〉
もとは、頭に冠をかぶり、胴をくねらせる大蛇を描写。
その大蛇の形に模様を加えたのが龍の字。
竜が最初に存在し、龍ができた。
〈日本〉
竜は「龍」の新字体。
1981年(昭和56)に当用漢字表外から常用漢字になる。
龍は「竜」の旧字体。
整理すると、「竜」という漢字が中国に存在。
時代を経て、「龍」が使われることに。
竜・龍の文字の先祖、甲骨文字や金文をながめると、
確かに「竜」の字のほうがオリジナルに近いですね。
『猫と龍』さんから
「竜」は、中国や台湾、香港では使われなくなりました。
繁体字を使う台湾の人も簡体字を使う大陸中国の人も、
「竜」の字を知る人は少ないようです。
龍は、簡体字で「龙」と書きます。
時代ごとの「龍と竜」の漢字の変遷をみると、
「龙」に似た字が唐の時代にありますね。
『漢典書法』より
日本では、中国から伝わった「竜」と「龍」が
2つ併存します。
戦後に日本人の使う漢字が整理されました。
1949年の「当用漢字字体表」にある「竜」が新字体。
表になかったり、それ以前に使っていた漢字が旧字体です。
「龍」は旧字体ですね。
昔の日本人は、「龍」の方が画数が多いし、
立派だと思ったんでしょう。
竜より龍を正字としていたのです。
ただ、戦後の国語改革で「竜」が正字になりました。
書きやすさから選ばれたといわれています。
竜が西洋ドラゴンで龍は東洋?
「龖」という漢字が存在します。
「龍 + 龍」が合体した字です。
意味は、文字通り「二匹の龍」です。
総画数は、32画。
読みは、トウ ドウ ソウ。
龍が空を飛んでいる様子が漢字になりました。
また、「恐れる」という意味もあります。
そら龍が、2体(匹)も空に飛んでいたらこわいですよね。
なにが言いたいのか。
「漢字はヴィジュアルがとても大切だ」ということです。
龍や竜に人が持つイメージはそれぞれです。
また、使い方に決まりはありません。
ただ、時代によっても使い方が決定されます。
どうやら日本人の「龍と竜」のイメージが、
固まってきたようなのです。
そのイメージを紹介します。
竜は恐竜の「竜」
2本足で立ち、背中に翼、どっしりと構えた印象。
火を吹く西洋風のドラゴンが「竜」
龍は水龍、画龍の「龍」
中国的、東洋的でくねくねと大蛇のよう。
雨と雲を連想させ、神聖なのが「龍」
これらと真反対のイメージを抱く人もいます。
ですが、ファンタジー小説などでは、
「竜」が西洋ドラゴンで
「龍」を東洋とするケースが多いようです。
また、「竜」はワニから。
「龍」は蛇から連想することも出来ますね。
三停九似「龍」のイメージの由来
中国で「龍」のイメージが固まったのは、
後漢時代の「九似説」と宋時代の「三停説」が
併せたものが基だといわれています。
三停とは、首から腕、腕から腰、腰から尾までの長さが
それぞれ等しいプロポーションだということ。
鱗は鯉、爪は鷹(たか)、掌(たなごころ)=手の裏は虎、
腹は蜃(しん)、項(うなじ)は蛇に似ていること。
※蜃は伝説上の生き物。項(うなじ)はしっぽのこと。
日本の龍と竜
日本の龍(竜)は、爪の数に特徴があると言われています。
中国では爪の数で位を表すようですが、日本は違います。
奈良時代の頃は、龍を5本、4本、3本と描いたようです。
平安時代は4本、鎌倉時代は4本と3本、室町時代以降になると、
いまと同じ3本となりました。
3が縁起が良いという理由。
鬼や妖怪の手は3本指が室町時代の決まりだったという理由。
理由は諸説ありますが、3本で描かれる龍が日本の特徴です。
また、土地の主(ぬし)、土地の神さまといった自然崇拝と民話が
各地に存在します。
古代神道の蛇神信仰と仏教伝来による水神がMIXされ、
日本中の神社仏閣で竜は祀られています。
栃木の日光東照宮の薬師堂、長野の妙見寺にある「鳴竜」
京都各地の禅寺、妙心寺、建仁寺、東福寺、大徳寺、相国寺、
南禅寺の天井に描かれた「雲龍図・鳴き龍」
以上の寺社仏閣に描かれた龍・竜の特徴。
少し鼻が長くて目が丸く、3本爪の龍を日本的な龍と言えそうです。
また、日本のアニメや漫画、ゲームが日本人の「龍・竜」イメージを
作っているとも言えます。
マンガ、鳥山明氏の「ドラゴンボール」の龍。
映画、宮崎駿氏の「千と千尋の神隠し」の白龍(ハク)。
ゲーム、ドラゴンクエストの竜王。
これらの「龍、竜」は私たちに強く印象付けていますね。
まとめ
竜と龍に意味の違いはありません。
が、漢字とイメージに違いがあります。
竜という漢字のあとに、龍ができました。
日本では、2つ存在します。
竜が常用漢字、龍が人名用漢字とされます。
最近のドラゴンのイメージから、
竜は西洋的、龍は東洋的といったものが、
人びとの持つ、イメージの主流になりつつあります。