卒業シーズンが近づくと、そこかしこで歌われる「桜の歌」。
それも、いいのだけれど…
何かを卒業して幾久しい身としては、
卒業以外にも「桜のうた」に名曲がたくさんある!と言いたくなってしまいます。
有名だけど、卒業ソングのランキングには登場することがなさそうな、
でも心に沁みる「桜ソング」を勝手に集めてみました。
原曲と、返歌がある「桜の歌」
最初に作られた「桜ソング」に、アンサーソングとして「桜ソング」があるもの。
「返歌」といえば、一般には短歌に託した恋文などへのお返事のことを指しますが…
ここでは、メロディも伴う「歌」へのお返事として「返歌」とさせていただきました。
アンサーソングといったほうがわかりやすいですね。
桜をテーマに、同じ作者(演者)が作ったものと、まったく違うアーティストさんが作ったものをご紹介します。
高野健一『さくら』・RSP『さくら ~あなたに出会えてよかった~』
RSPは、関西出身の女性ヴォーカルユニット。
プリンセスプリンセスなどのヒット曲をサンプリングして、
その曲のアンサーソング(お返事ソング)を作り出す独特の手法の方たちです。
この曲は、高野健一さんが作った「さくら」への返歌となっています。
天国にいってしまった「さくら」への「僕」の気持ちを歌った高野さんの原曲に、
RSPさんが「私=さくら」として、お返事ソングをつくりました。
ありがとう ずっと大好き
私は星 あなたを見守り続ける
あなたに出会えてよかった 本当に本当によかったここにもういれなくなっちゃった
もう行かなくちゃホントごめんね
さくらさくら会いたいよ
いやだ君に今すぐ会いたいよ天に召します神様お願い
僕の息止まっちゃいそうだ
高野健一さんは、西加奈子さんの同名小説『さくら』に感銘してこの楽曲をつくったそう。
小説では「さくら」は犬ですが、楽曲では大切な人として描かれています。
【さくら】高野健一
【さくら あなたに出会えてよかった】RSP
KANA-BOON 『さくらのうた(2013)』・『桜の詩(2018)』
こちらは、2曲とも、KANA-BOONの歌。
2013年のミニアルバムと、2018年リリースされたB面集のアルバムより。
曲は、元気いっぱいで好みが分かれそうですが、MVと合わせてぜひご覧ください。
若い女性教師と男子高校生の甘く切ない恋の物語。
男の子目線の、まっすぐで不器用な「さくらのうた」。
対して「桜の詩」は、5年経った後の、先生側の目線で歌われています。
学生時代、先生に淡い好意を抱く。
一度くらいはみなさんもあるのではないでしょうか。
はち切れそうな想いを叫びながら、国道を自転車でひとり突っ走る。
今やったらひざを痛めそうです。
好きな人を後ろにのせて二人乗り(違反ですね)なんて、最後にやったのはいつだろう。
不格好で、直球で、でも素直になれなくて。
でも鮮烈で忘れられない恋心はさくらそのものかも。
なんで、どうして、おしえて
僕は子供だった、もう戻れないのかなあ
でもね、二人で見たあのさくらは今年もきれいに咲いているんだよ叶わない、
叶わないけど構わない。
そう言える、そんなただ強がった大人になりたいんだけど
桜の花が舞って
あなたの声を思い出してしまう
淡い春よ歌詞の一部を引用
KANA-BOON 【さくらのうた】
KANA-BOON 【桜の詩】
切ない別れがテーマの「桜の歌」
切なくない「別れ」などありませんが、
終わった恋に別れを告げる、静かな歌を2曲。
恨み節や、断ち切れない思いをどろどろと歌ったものではなく、
舞い散る桜に、それぞれの別れを重ねた、美しい旋律です。
古川由彩『桜の記憶』
古川由彩さんは、2020年にデビューしたばかりの新人歌手さん。
一緒に暮らした人と別れると、暮らした街にも別れを告げなければならない。
毎日当たり前に見ていた、日常の風景が、色を失いまったく違って見える、独特の切なさを歌ったもの。
透き通る歌声と、レトロタッチのイラストの演出が素敵です。
この街での記憶は
きみとの記憶と同じだから帰れない もう帰れない
あの駅も 看板も 公園も
君がちらつくから歌詞の一部を引用
【桜の記憶】 古川由彩
柴咲コウ 『 桜坂』
福山雅治さんの「桜坂」のカバー曲。
柴咲コウさんは、福山さんのカバーを多く歌っていますが、なかでもこの曲が一番好きです。
なぜか、福山さんverよりも優しい穏やかな気持ちになります。
柴咲コウ【桜坂】カバーアルバム「こううたう」
桜が降る夜は あいみょん
若者から絶大な人気を誇る、あいみょんさん。
てらうことのない、素直な気持ちを歌った詞が、どれも素敵ですよね。
若者から絶大な人気があるのもうなずけます。
この曲は、春からは離れて暮らす愛しい人への想いを歌ったもの。
女性目線になっていますが、
男性でも、女性でも、遠距離恋愛の経験者ならぐっとくるかも。
昭和の大昔にも「木綿のハンカチーフ」という名曲がありましたが、
あちらは、明らかなバッドエンド。
こちらの歌は、いつかハッピーエンドになって欲しいなあ~と想像してしまいます。
桜が降る夜は貴方に会いたいと思います
どうして?と聞かれても、わからないのが恋で
この体ごと貴方に恋してる
それだけはわかるのです4月の夜にもう2人は合えないのかな
遠くに見える
貴方はまるで知らない誰か真面目な顔は好きだけど、今は見たくない
新しい色に染まるのは
桜だけでいい
あ
命や、生きることがテーマの「桜ソング」
巡りくる春とともに、再生、命のつながりを歌ったものを集めました。
桜 河口恭吾(2003)
有線放送でじわじわと人気が出て、今も根強い人気がある名曲。
河口恭吾さんの「I LOVE YOU singles」より。
大切な人と、巡りくる春を数えて生きていこう、とシンプルに歌い上げる名曲。
聞けば「ああ、これね!」とわかる方が多いはず。
僕がそばにいるよ 君を笑わせるから
桜舞う季節かぞえ 君と歩いていこう空のない街抜け出し 虹を探しに行こう
歌詞の一部を引用
2012年に「桜 キズナver.」として再リリースされたMVをご紹介します。
静かで優しい、心が温まる一曲です。
【桜/キズナver】川口恭吾
ふくい舞 『いくたびの櫻』
舘ひろしさんが主役を演じる、NHK時代劇の主題歌でした。
春が来れば当たり前のように咲く桜。
でも、命や、桜を大切な人と見ることは、未来永劫に続く「当たり前」ではない。
こういう歌詞がしみてしまう、あ~年取ったなあ、とダブルの意味でほろりとくる曲です。
【いくたびの櫻】ふくい舞
森山直太朗 『さくら(二〇一九)』
森山良子さんの息子、直太朗さんの代表曲。
定番卒業ソングでもありますが…
「刹那に散りゆく運命」「泣くな友よ今、惜別の時」という意味深な歌詞から、空に飛び立つ特攻隊員の別れの情景を歌ったものでは?と言われることもあります。
ここでは有名な「独唱」バージョンではなく、2019バージョンのMVをご紹介。
脈々と受け継がれていく生の営みや、さあ、みんな、また立ち上がろう、という力強いメッセージ。
卒業とも、戦地から飛び立つ特攻のイメージとも違う、新しい「さくら」を感じられます。
霞みゆく 景色のなかに
あの日の唄が聞こえる
【さくら 二〇一九ver】森山直太朗
若旦那『いのち 〜桜の記憶〜 Final Ver.』
湘南乃風の若旦那さんの曲。
森山直太朗さんの2019verの「さくら」と同様、脈々とつながり、続いていくものを感じる、明るく力強い歌。
昭和や平成初期に世代には、グッとくる歌詞です。
実際に大人になってみないと、トシをとってみないとわからない
「親も若い頃があって、自分もいずれ大人になって、年をとって」という気持ち。
だから、言えるうちに言っておこうぜ!と、照れずに、まっすぐに歌い上げてくれています。
ちっぽけな命の花が
都会の隅で愛に包まれて花咲くthank you forママ
thank you forパパ20年後にそういわれたいから
お前に子供が生まれたら
この歌を俺たちに歌ってくれ歌詞の一部を引用
若旦那【いのち 〜桜の記憶〜 Final Ver.】
ちょっと変わり種の「さくら」
MONKEY MAJIK 『sakura』
卒業ソングかもな~とも思ったのですが、面白いのでご紹介します。
大人になりたくない気持ちや、
大人になる不安や期待、葛藤を歌った素敵な歌詞に、
まったくそぐわない時代劇設定のMVが絶妙な味わいを出しています。
MONKEY MAJIKご本人たちが演じ、瑕疵がセリフになるように歌っています。
僕らが大人に近づいて
時間が短くなっていく周りが大きく変わっても
僕らは変わりたくなかったこの気持ちをいつまで持つの?
その不安を拭い切れるの?
希望の明日は必ず見つかるの?
駆け抜けた日々
MONKEY MAJIK/sakura
日本古謡の「さくら」
さくら さくら(日本古謡・唱歌)
最後に、定番中の定番なのに、忘れがちなこの歌を。
幼稚園や小学校で習い、歌いましたよね。
この歌は、子守歌や、子供の手遊び・まり遊びから発生したものではなく、江戸時代の子供用の筝(琴)の練習曲だったそうです。
明治に歌詞がつき、日本の代表的な歌となりました。
ずっと口ずさむこともなかった曲ですが、改めて聞くと、シンプルなのにとても美しいです。
さくら さくら NHK児童合唱団
おまけ 桜の語原は神話の女神「コノハナサクヤヒメ」
桜という言葉の語原は、記紀(日本書紀・古事記)に登場する女神
コノハナサクヤヒメ(木花之佐久夜毘売)といわれています。
豊穣の神ニニギノミコトが天から降臨した際に、偶然出会った、美しいコノハナサクヤヒメに恋をし求婚。
父である大山津見神は、コノハナサクヤヒメとともに、姉であるイワナガヒメも娶るようにと条件を出しますが、ニニギノミコトは、醜い姉が好きになれず、天に返してしまいます。
ところが、美しい妹は繁栄をもたらし、醜い姉は永遠の命をもたらすものだったのです。
神話のニニギノミコトは「天照大神の孫で、神武天皇の曽祖父」。
イワナガヒメと結婚しなかったことで、以降、天皇家には寿命というものができてしまったのでした…という物語です。
卒業とは少し違うトーンの桜の歌と、桜の語原をご紹介しました。
10選と書きつつ、絞り切れず、気づいたら10曲以上になりましたが、どうぞご容赦を。
桜にまつわるこちらの記事も、合わせてどうぞ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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