松竹梅とは1つの意味がある言葉なのか、
ただの順序を示した言い回しなのか。
言葉の由来と順番の話。
ウナギを注文する時の松竹梅の本当の違い、人はなぜ、竹を選んでしまうのか。
松竹梅にまつわるウンチクの紹介です。
松竹梅の由来と順番
松竹梅とは?
そもそも「松・竹・梅(しょうちくばい)」は、宋時代の中国で「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」といって文人画の画題~好んで描かれたお題が元とされます。
一画面に「松・竹・梅」を描く「三清図」や「三友図」と呼ばれるものです。
松は冬の寒さにも耐えて緑を保つ不易の精神として。
竹は落葉せずにすくすくと成長する生長の力として。
梅は春一番に花を咲かす生命力として。
その植物をたたえる言葉~「歳寒三友」は風流であり清廉さを表します。
平安時代の日本に伝わり時代を経て「めでたい」ものとして江戸時代に定着しました。
平安時代に「松」、
室町時代に「竹」、
そして江戸時代に「梅」が
慶事・喜びの象徴・吉祥として人々に受け止められたのだそうです。
松竹梅の順番は?どちらが上?
料理などで示す順番としては、
上から「松→竹→梅」の順にランク分けされるのが慣例です。
たま~に、逆の場合もあるらしいですが。
本来の意味では、優劣の順序があるわけではありません。
席次などの場合は、順番はありません。
「福禄寿」、「雪月花」、「青海波」と続くと結婚式など御目出度い席次やテーブルの名付けで見かけますよね。
縁起の良い言葉で便宜的に「ものを数える」という機能もあるということです。
うなぎの松竹梅の秘密
土用の丑の日(7月20日)に鰻(うなが)を食べるようになったのは、江戸時代の後期の頃。
「夏バテに効く鰻を食べて暑さを乗り切る!」
天才発明家・平賀源内が知り合いの鰻屋さんに頼まれて販促キャンペーンを打ったのが始まりなのだとか。
その鰻を注文するのに、お店のメニューが「松竹梅」とある場合。
お寿司屋さんなど和食店や居酒屋でも目にしますよね。
料理を提供するお店でしばしば見る「松竹梅」の区分。
せっかくおいしい鰻をお客さんに提供するのに、「上」「並」とランク付けは避けたいとの思いから
「松・竹・梅」で区分けしたのが始まりだとされます。
では「松竹梅」のウナギで何か違うのか?
一般的には、鰻の質よりも、鰻の量で「松・竹・梅」と分けているお店が多いようです。
小鉢やデザートなどの、プラスアルファで差を出している場合もあります。
「天然ものか養殖の鰻か」といった区別をしているお店もありそうですが
あえて「松(天然)」「竹(養殖)」「国産」「国外産」などと大書きしているのを見たことはないです。
まったくゼロではないと思いつつ、
うなぎの質には、そう大きな差はなさそうです。
料理の質や美味しさは、料理人さんの腕前・技術如何ということですね。
違いを聞いてみれば、教えてくれると思いますよ。
「うな丼」と「うな重」の場合は?~何が違うのか。
こちらは、字義通り、
器(うつわ)が「丼(どんぶり)」か「重箱」の違いだけのことです。
うな重は、ご飯と分けて提供していた習いを踏襲して雰囲気を楽しみます。
また、重箱は冷めにくいという利点があります。
高級感がありますしね。
なぜ竹を選んでしまうのか
うなぎなどの料理店に「松竹梅」がメニューにあると、大抵の人は竹(たけ)を選ぶのだとか。
松を「特上」-竹を「上」-梅を「並」とした場合、竹を選ぶ人が半分を越えるのだとか。
なぜ、人々は「竹」と言ってしまうのか。
お腹の空き具合やお金の懐具合に関わらず、思わず「竹」を選んでしまう理由とは?
松竹梅の法則
3つの選択肢を示されたとき、
真ん中のものを選んでしまう行為を指して「松竹梅の法則」、または「極端回避性」といいます。
3つの内、一番安いものは真ん中より劣るだろうという心理になります。
一番高いものには失敗した場合や金銭的な抵抗感から避ける心理が働きます。
先に一番高い値段を見ると、真ん中以下のものが安く感じる「アンカリング効果」も働きます。
選択肢を3つくらいに絞って提案されると、
意識にフレーム(枠組み)が出来上がり、意思決定に影響を及ぼすことを「フレーミング効果」と呼びます。
表現の仕方を変えて相手の受け取り方を大きく変えてしまう効果でもあります。
一番売りたいものを「竹」に設定するのは、これらの効果を知った上でのことです。
私たちが思わず取ってしまう不合理な行動には、仕掛けがあったのですね。
松竹梅のどれかを選ぶ機会があれば、
自動的に「竹」と言わずに他の選択肢を考えてみるのも良いかもしれません。
松竹梅のまとめ
「うめうめたけまつたけうめ」
ベストセラー作家、村上春樹さんの小説・「ねじまき鳥のクロニクル」に出てくるセリフです。
地下鉄に乗り降りする人の頭髪の具合を「松竹梅」で区分けしてカツラの調査をしている場面。
「松」は完全に禿げている人、「竹」は相当薄くなった人、「梅」はいささか薄くなったと思われる人。
私はその小説を読んでしばらくの間、
電車に乗ると頭の中で人様の頭皮の具合を「松竹梅」でジャッジしてしまう癖がつきそうに。
イカンイカンと、思いつつも得心した「松竹梅」の使い方。
目出度き慶事にも、何かを分類したい時にも使える松竹梅についてのお話でした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。