天気の「特異日」とは何か?
異常気象の影響か、特異日が当たらなくなってきた?
怪しくなってきた「特異日」も検証しつつ、一覧にしてみました。
東京で、1年のうち、最も晴れる確率が高い日はいったいいつか?
平年日と併せて紹介します。
特異日とは何か?
特異日(とくいび)とは、
毎年「特定の日」に「その前後の日とは違う」
特異な天気・気象状態が起こる「ことが多い」日のことです。
ポイントは「前後する日が似たような気象ではないこと」。
たとえば「6月1日」が毎年たいてい雨であっても、
前後した日にも雨が降ることが多いような場合は、特異日とはいいません。
「特定の日だけがなぜか毎年、雪」といった場合が「特異日」に当てはまります。
これは、日本だけの現象でもなく、
世界的に「Singularity(climate)」として知られていて、
今も多くの人が理由を探り、研究しています。
読みは、シンギュラリティ。特異点、といった意味になります。
特異日が発生する原因
はっきりと解明されていません。



諸説ありますが、どれも仮設の域を出ません。
特異日(Singularity)の起源
1920年代よりドイツのアウグスト・シュマウス(A.Schmauss)が
特異日の研究をしたことで知られ、
気温や降水の特異日の日付を作成しこれを特異性という語から「Singularität」としました。
北アメリカの1月25日頃に暖かくなる特異日
「1月の雪解け(January thaw)」や
秋の中頃に暖かくなる
「インディアン・サマー(Indian summer)」が有名です。
伝承や厄日と特異日は関係あるの?
◇日本の暦(こよみ)を元にした、二百十日(にひゃくとおか)
=台風が多いとされている厄日の一種。
◇北米やヨーロッパのグラウンドホッグデー
=2月2日が晴れなら、冬は長引くとの言い伝え。
◇イギリスの、St.Swithun’s day
=6月15日に雨が降ると、40日間の長雨になるとの民間信仰。
こういった、世界中の気象にまつわる民間伝承とは、別ものです。
より科学的で、統計的な解析から特異日を算出しますが、
人々に「特異日」が知られ始めると、
歴史的な日、例えば11月9日(ドイツの運命の日)といった日なども含まれるようになりました。
日本でも、11月3日(文化の日)は、
全国的に晴れの特異日と知られ、運動会などの催しがなされることが一般的です。
また、台風の特異日である9月26日も、1960年代から、当てはまらない日が増えてきています。
2000年代からは、それら特異日に対しての
疑義が生じ始め、特異日から除外して考えることもあるようです。
大学共通テストの日は特異日で、雪が降る?
特異日と勘違いされているのが、
東京オリンピックの初日と、大学共通テストの日です。
1964年の10月10日は、
東京オリンピックの開会式の日でした。
どうしても晴れの日に開催したい日本は、気象庁に依頼。
晴天の確率が高い「10月15日(木)と10日(土)」を候補にして、週末の10日を選んだそうです。
結果、晴天に恵まれ大成功だったのですが、毎年のことではありません。
また、人の記憶として残りやすいのか
共通テスト(過去の「センター試験」「共通一次」)の日は
雪が降りやすい、「雪の特異日」と考える人が多いそうです。
統計的にみると、確かに雪は降る年もあるものの
「雪の日」とするのは言い過ぎなようです。
数年に一度でも、
雪になって交通機関に影響が出ると
ニュースで報じられますので、
人の記憶に「雪が多い」と残りやすいのでしょう。
怪しくなってきた特異日
どうも特異日が怪しくなってきた!?
特異日が本当に「特異」な日なのか?
昨今は、日によっては疑わしい傾向にあるそうです。
天気を専門に情報を発信している
「ウェザーニュース」さんによると、
代表的な特異日とされる11月3日「晴れの特異日」が
疑わしくなってきいるそうです。
文化の日は、第二次世界大戦前は晴れる確率が高かったそうですが、
その後昭和30~40年代には、雨天が混ざるようになり、
その後また持ち直し…また崩れがちになっています。
2007年から2016年の10年間で、11月3日に晴れたのは5回(東京)。
10年で5回、確率およそ二分の一です。
一方、6月28日の雨の特異日は、高い確率で全国的に雨なのだとか。
天気の予報ほど難しいものはないと聞きますが、
「特異日」がより不確かになっているよう感じます。
毎年の天気が不安定化したとも考えられますね。
映画の「デイ・アフター・トゥモロー」みたいな
事態にならないよう願うばかりです。
特異日と平年日を一覧にしてみた
主な特異日一覧
現在、一般的には、以下の日が「特異日」と言われています。
<晴れの特異日>
1月16日、3月14日、6月1日
11月3日(文化の日)
<雨の特異日>
3月30日、6月28日(東京では53%の確率で雨)
7月17日(裕次郎雨:故・石原裕次郎さんの命日にあたります)
<花冷えの特異日=4月6日>
花冷えとは、桜が咲くころに唐突に訪れる寒い日。
寒の戻り(2月の立春から4月頃にかけての、急に寒い日)とは違います。
<猛暑の特異日>
8月18日
<台風の特異日>
9月17日、(9月26日)
9月26日は、1950年代には、伊勢湾台風など大きな台風が上陸する特異日とされていましたが、
1960年代には怪しくなり、最近は除外されて考えられています。
これに平年日も加え、まとめてみました。
1月
3日、6日、16日が晴れやすいとされる。
特に16日が特異日として有名。
初雪の平年日は2日(東京)。
2月
全国的に天気がぐずつく。
春一番(南よりの強い風が吹く)の平年日は25日(東京)
3月
14日は晴れが多い。
30日は雨の日が多い。
31日は温暖になる特異日。
終雪平年日は、福岡で4日頃、大阪で7日頃、東京で10日頃。
4月
3日は花嵐(花桜に吹く強い風)、4日は荒れ模様。
5月
2日の「八十八夜の別れ霜」(晩春、最後に降る霜)
13日が晴れやすいとされる。
18日は全国的に暖かくなる。
6月
1日は晴れの特異日。
入梅の特異日~沖縄で5月中旬、西日本で10日頃。
28日は雨が多いとされる(東京は例年53%の確率で雨)
7月
中日本・西日本では、5日が悪天(雨)の特異日。
17日は、「裕次郎雨」とも命名される雨の多い特異日。
8月
1日、8日、12日は晴れの多い日。
18日は猛暑の特異日。
9月
12日は雨の特異日
17日、26日に台風襲来が多い日とされる。
10月
30日が初霜平年日。
札幌では、10日が初霜平年日。
11月
3日が全国的に晴れの多い日とされる。
8日は木枯らしの平年日(東京)
12月
10日が晴天の多い日。
28日は、悪天の特異日。
※平年日は「1980~2010平均」をもとにしています。
東京管区気象台による天気の出現率を80%以上の「晴れの日」に絞って記してみました。
気象データから、1年のうち「最も晴れそうな日」を探す
2020年までの過去10年分の気象データが
発表されていましたので、比較してみました。
統計期間
緑文字:1981年~2010年
青文字:1991年~2020年
1月 | 1、3、5、10、11、14、15、25、26、27、30 |
1月 | 1、2、3、4、5、6、10、11、29、30、31 |
2月 | 11 |
2月 | 2 |
3月~11月で通年晴れ(80%以上の日)なし | |
11月 | 23 |
12月 | 2、4、10、15、16、20、23、24、25、27、28、29、30、31 |
12月 | 10、15、16、20、21、24、25、27、28、29、30、31 |
1981年から20年のデータで比較してみると、
12月24日(93.3%)、
29日(93.3%)は高確率で東京は晴れ。
1990年からの20年で比較してみても、
12月24日が(93.3%)
28、29、31日も86.7%の高確率で東京は晴れ。
過去40年分のデータから見る限り、
東京で、1年で最も晴れる確率が高いのは
クリスマスイブという結果に。
世間に流布する(ネットで紹介されている)特異日とは、
全く違った結果になりました。
雨については、過去40年を見て
80%、70%の確率で東京に雨が降った日が
1日もありませんでした。
1981~2010年のデータで
60%を上回った雨の出現日は、6月26日(63.3%)のたった1日。
1991~2020年のデータで
60%を上回った雨の出現日は、6月ではなく、10月1日でした(こちらも63.3%)。
東京のみの現象なのでしょうか。
はっきりはわかりかねますが、異常な気象は願い下げですね。
まとめ
天気俚諺(りげん)
人々によって伝承されてきた天気の経験則を諺(ことわざ)にしたものです。
二月の雪、三月の風、四月の雨が 美しき五月をつくる
四月の雨の日には、いよいよ最高の季節、5月が来ると毎年心踊ります。
「二月の雪、三月の風、四月の雨が輝く五月をつくる」と
本のタイトルにあるように人生になぞらえた言葉でもあります。
イギリスでは、
March winds and April showers bring forth May flowers.
3月の風、四月の細雨 咲き運ぶは5月の花
春を待ちわびつつ、天気にまつわる
「特異日」「平年日」の話でした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。