『令和元年度』という言葉。
本来、存在しない幻(まぼろし)の言葉だったのですが、現実に使われる用語となりました。
なしだった「令和元年度」が、どうして「アリ」になったのか。
「年度」の説明からはじめて、
今年度、本年度、来年度、新年度。
これらの違いや使い方を付記して、記しておきました。
一緒にみていきましょう。
年度とは?令和元年度はアリ?
「今年度」「来年度」「新年度」
これらに、表現上の決まりはあるのか?
まずは、◯年度の「年度」とは何か。
そこからみていきましょう。
年度とは?
まず、「年度」について。
「年度」は、暦年とは違います。
こよみ上、365日、うるう年(366日)の
1月1日から数える1年が暦年。
暦年は、一般的なカレンダーで使われますね。
年度は、暦年とは別の1年間の期間、区切り方です。
4月1日を始点にする年度もあれば、1月1日を始点にする年度もあります。
官公庁や企業、団体などの「年度」
官公庁、企業や団体が事務や会計の便宜上から区切る1年の期間。
国の「会計年度」は財政法で
「毎年4月1日開始、翌年3月31日終了」と定められています。
令和1年の会計年度はこうなります
平成31年4月1日から (2019) | 平成31年度予算 =令和元年度予算 |
: 令和1年5月1日 | |
: 令和1年12月31日 | |
: 令和2年1月1日 | |
: 令和2年3月31日まで (2020) |
代表的な年度一覧
会計年度 | |
日本 | 4月開始 |
北米 | 10月開始 |
EU、中国 | 1月開始(暦年と同じ) |
学校年度 | |
日本 | 4月開始 |
EU、北米、中国 | 9月開始 |
農作物・加工品 | |
米穀年度 | |
日本 | 11月開始 |
中国 | 1月開始 |
小麦年度 | |
米国 | 6月開始 |
中国 | 9月開始 |
穀物年度 | |
米国 | 9月開始 |
日本の農作物・加工品、工業製品の年度 | |
砂糖年度 | 10月開始 |
大豆年度 | 10月開始 |
いも年度 | 9月開始 |
生糸年度 | 6月開始 |
醸造年度 | 7月開始 |
綿花年度 | 8月開始 |
肥料年度 | 6月開始 |
農薬年度 | 10月開始 |
令和元年度は特別!?
「令和元年度」という言葉も区分も原則的には、存在しないのですが・・・。
あっても良いということになりました。
どういうことか、みていきましょう。
令和元年度はない!?
☆「年度」の区分だと、「令和元年度」は、原則、存在しません。
平成31年度
平成31年(2019) 4月1日から令和2年(2020)3月31日まで
令和2年度
令和2年(2020) 4月1日から令和3年(2021)3月31日まで
大正から昭和の例
大正→昭和
大正15年(1926) 12月26日に「昭和」改元
大正15年(1926) 12月25日(施行日なし)から昭和元年(1926)12月31日まで
大正15年度
大正15年(1926) 4月1日から昭和2年(1927)3月31日まで
昭和2年度
昭和2年(1927) 4月1日から昭和3年(1928)3月31日まで
「昭和元年「度」」は原則ナシ
表記する場合は、「大正15・昭和元年度」(大蔵省理財局・国債統計年報を参考)
昭和→平成
昭和64年(1989)1月8日 「平成」改元
昭和63年度
昭和63年(1988)4月1日から平成元年(1989)3月31日
昭和64年度は存在せず
平成元年度
平成元年(1989)4月1日から平成2年(1990)3月31日
令和元年度があるケース
☆国の「会計年度」のみ「令和元年度」が存在します。
「令和の改元日は5月1日からですが、令和元年という期間は、
前戻って4月1日から」ということになります。
根拠となる国からの発言等は、以下に記載しておきました。
〔平成31年4月2日閣議 内閣官房長官発言要旨〕から抜粋・引用
○国の予算における会計年度の名称については、原則、改元日以降は
「令和元年度」とすること
〔平成31年4月11日 新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議申し合わせ〕から抜粋・引用
3.個別事項
(2)予算
国の予算における会計年度の名称については、原則、改元日以降は、当年度全体を通じて
「令和元年」とし、これに伴い、当年度予算の名称は、各府省が改元日以降に作成する文章に
おいては「令和元年度予算」と表示するものとする。
PDFより抜粋・終わり
出典:「元号について」内閣府
こういった国の通知文書が存在すると・・・。
民間への拘束力はないのだけれど、右に倣(なら)えと、
行政機関はもちろん、公共団体、民間団体、民間企業と使う方向に。
よって、「令和元年度」は存在して使われるように。
4月1日始めの年度だと、たった1ヶ月間でも「平成31年度」ですしね。
※本来は、「平成31年度」-「令和2年度」でしたが国が「令和元年度」もアリ!と発表してしまったのです。
[学校年度の例]
2019年、4月の入学式は「平成31年度入学式」
2019年、9月の入学式は「令和元年度 秋季入学式」(東京大学)
2020年、3月の卒業式は「平成31年度卒業式」又は「令和元年度卒業式」
2020年、4月の入学式は「令和2年度入学式」
となる理屈。
「R1」はアリで「令和1年度」はナシ?
ちなみに令和元年のアルファベット表記は『R1』です。
令和は、REIWAで、H29,H30,R1・・・と続きます。
「R元」は間違いだと思います。
平成は「H1」が使われていましたから。
「令和元年度」は使いますが、
「令和1年度」は通常、使いませんね。
間違いではありませんが、「1年」を「元年」とするのが一般的です。
慣習として、元年が広く使われています。
「今年度」「来年度」「新年度」の違いと使い方
まず最初に『度』が付くと意味合いが変わるということです。
ただ「今年」「本年」「来年」「新年」とするのと、
「今年度」「本年度」「来年度」「新年度」は違います。
『度』が付くと「期間」「区切り」があることが強調されます。
その「期間・区切り」の中、活動した記録と結果に重きがあります。
また、現在の立ち位置によって表現も代わります。
ひとつ前の年度 | 現在の年度 | ひとつ先の年度 |
昨年度 | 今年度 本年度 (今の立ち位置) | 来年度 明年度 |
前年度 (立ち位置の基準が 過去・未来) | 次年度 (立ち位置の基準が 過去・未来) |
新しい年度,,,,,新年度
年度の開始,,,,,年度始め (学校年度だと、4月1日)
年度の終わり,,年度末 (学校年度だと、3月31日)
今年度と本年度の使い方
今年度と本年度に特段、違いはありません。
では、どう使うのか?
「慣例に従いましょう」というのが答えだと思います。
学業の場面、仕事の場面、業種や業界によって使い方も色々です。
「~・度」の年度の使い方は過去の記録があるはずです。
ここは慣習・慣例に従い、過去にならって使いましょう。
同じ業界や組織に属している者同士だと、
「~年度」を会話やメール、年賀状でも使用できます。
けれど「共通の年度」がない相手に「~年度」を使うと混乱をまねきます。
人によって違う「~年度」があるからです。
年賀状では、「度」のつく「~年度」は使わない方が無難。
年度の表し方
〈例〉(令和)2年度予算
今年度~、来年度~を使う場合は月日を付けて説明。
〈例〉4月から始まる「来年度予算」
厳格なフォーマットがある場合には、それに従うこと。
新聞業界では、「今年度」、「明年度」はあまり使わず、
「本年度」「来年度」を使う。
放送業界では、「本年度」、「明年度」は使わず
「今年度」「来年度」を使用します。
はっきりした理由は分からないそうですが、どう伝えるか判断した結果の慣例でしょう。
まとめ
「年度」とはなにか。
普通のカレンダーとは違い、
区分を独自に決定した1年間のことを意味するのでした。
「令和元年度」は、本来使われない用語ですが、
国の会計年度に使用されると決まってからは、
他の公共団体や民間も使うようになってきています。
「今年度」「本年度」「来年度」といった、
言葉の使い方や違いは「立ち位置」が重要だと記しました。
また、年度を使う場合は、数字や時期を明記して
相手に伝わるよう、説明する必要がありますね。
以上、「年度」に関する説明とまとめでした。