最近、揚子江という言葉。
聞かなくなったと思いませんか?
教科書や放送では、
あまり使われなくなってきました。
どういうことか。
長江と揚子江について。
なぜ、中国と外国では呼び名が違うのか。
「河」と「江」の違いについて解説します。
揚子江とは?長江は同じ?
出典 中国における水環境の現状を踏まえた
分散型排水処理技術の取組みと提言(2012年度 31巻3号)
読みは、「ようすこう(揚子江)」
「揚子江」と「長江」は同じです。
日本では、長江のことを「揚子江」と呼んでいました。
近年は、その慣習をやめて揚子江を「長江」と呼ぶようになりました。
中国では、元から「長江」チャンジャン(チャンチヤン)という呼称でした。
揚子江はヤンツーチヤン。
「揚子江文明」だと、「長江文明」のことですね。
最近は「長江文明」で通ります。
揚子江とは?
くどいようですが、
揚子江とは、長江のこと。
中国やアジア圏の中で最長。
長さで比べると世界第3位の川。
欧米諸国や日本では、長江を「揚子江」としてきました。
英語なら「Yangtze River」「Changjiang」の名で通ります。
揚子江は、長江の下流域の名前なのですが、
河川全体を指す名詞として世界に広まりました。
揚子江周辺に住んでいる方は
あの川全体を「揚子江」だとは、言わないようです。
あの川の名前は?と聞かれれば「長江」という答えだそうです。
長江は、源流、上流、下流などの名称、部分名があります。
中国には、川の区分の名称として「揚子江」があります。
また、文人の詩歌にもでてきます。
長江の下流域、
江蘇省揚州市から鎮江市におよぶ流域が「揚子江」と区分されます。
名称 | 場所 | 特徴や長さ |
沱沱河 | 源流と通天河 | 813km チベット高原北東部の峡谷 |
金沙江 | チベット巴塘河口から四川省宜賓市 | 2308km 「虎跳峡」大峡谷 |
川江 | 川江宜賓から湖北省宜昌市 | 120km(三峡ダム起点)四川を流れるから川江 ~長江上流域 |
荆江 | 宜昌から江西省九江市 | 長江中流域 赤壁の戦い 岳陽楼 |
揚子江 | 九江市から河口 | 長江デルタ 上海 |
長江の下流域がなぜ「揚子江」かといえば、
(当然ではありますが)「揚子」という地名から来ています。
現在の江蘇省(こうそ・チヤンスー)にある
揚州市(ようしゅう・ヤンチョウ)にあった「揚子城」の辺りの地方名。
揚州城近くの小都市が「揚子」、
「揚子津」と呼ばれるようになります。
※「津」は、川を渡る船が集まった場所の意味です。
長江沿岸にある小さな渡船街が「揚子津」だったのです。
小さな街が、川の交易・交通の発展で大きくなり、
今の長江下流域が「揚子江」と呼ばれるようになったわけですね。
古い日本の書物だと「洋子江」と表記されることも。
なぜ外国では、「揚子江」となったのか?
では日本を含めた外国では
なぜあの河川そのもの、全体を「揚子江」と呼んできたか。
諸説あるようですが、“聞き間違え”が有力なようです。
西洋人が長江(揚子江)を渡っていたとき、
渡船の船頭に川の名前を訪ねました。
船頭は「橋」の名前「揚子橋(ヤンツチヤオ)です」と返答。
それを西洋人が「揚子江(ヤンツチヤン)」と聴き間違え。
それ以来、川の名前が「揚子江」と広まったという説話です。
中国大陸に流れる大きな川、黄河と長江。
黄河が5464km、長江が6380kmの長さ。
中国二大河川として有名ですね。
3大河川だと、淮河(わいが)が入ります。
黄河と長江の間に位置し、
北から黄河、淮河、長江の順です。
古くは「淮水」と呼ばれ、長さ1078km。
大きさだと、南に位置する珠江(しゅこう)が有名です。
英語名 The Pearl Riverは、長さ2200kmで、
流域面積では、長江に次ぐ広さです。
3つの大河(西江、北江、東江)が広州の辺りで合流し、珠江デルタを形成。
これら分流の総称が「珠江」です。
参考
学校などで習う「世界三大河川」といえば、
一般的に
ナイル川(6695km)
アマゾン川(6516km)
ミシシッピ川(5969km)を指しますが、
実は世界で3番目に長い川は6380kmの長江なのです。
揚子江気団
長江気団とも表します。
中国の揚子江(長江)流域に出現する、高温・乾燥の気団。
この気団がジェット気流(偏西風)に乗って、西から東へ移動。
間接的に、日本の天気に影響すると言われています。
特に春や秋のカラッたした晴天は、
この移動性高気圧が運んできたものとされています。
いつから呼ばれなくなった?
ちょっと、待って!
揚子江は川だと習ったよという方。
訂正されたとも聞いてないよと。
日本や欧州で、慣例的に「長江」を「揚子江」と呼んできていました。
最近では、「揚子江」は長江の添え書きで表記されることが、多くなりました。
誤りを訂正したり・呼称を変更したのではないのですが、
教科書やメディアでは「長江」とするようになりました。
NHKでは、「揚子江」の呼称を
「長江」に変えたのは1996年頃でした。
カッコ付きで揚子江と表記したり、言葉添えをして説明していました。
英語圏では、まだ長江を「揚子江」と呼ぶことが多いようです。
子供の頃にそう習った日本人も、当然揚子江と呼んでいますし、少なくとも日本国内ではそれで大抵通じます。
河と江の違い
古代中国では、「江(チヤン)」の一文字で長江(揚子江)を指し、
「河」の一文字で黄河を意味しました。
(大江=長江を指すことも)
それ以外の河川は、「水」と呼んでいました。
「洛水」「漢水」「渭水」などです。
「河」→「黄河」
他の川→「水」
時代を経て、大きな河川に
「河」「江」とつけて呼ぶようになりました。
大雑把に北では「河」、
南や東北では「江」が使われるようになります。
中国では、「川」は総称に使われることはあるが、1語では使いません。
山川、河川、四川、高山大川など。
自然の水が流れる「水路」といった意味でも「川」で表します。
「河」は、「川」より規模が大きい場合に使います。
また、「流れ」といった曲がっているという意味も含まれます。
「江」は、「河」よりも大きな規模、スケールの大きい川のことです。
日本では、大きさに関係なく
川は全て「川」で表記しますね。
まとめ
揚子江という名称を、
中国と同様に「長江」と表記するよう
併記したり、言い換えをしている途中。
揚子江という歌謡曲があったり、
大阪には揚子江ラーメンという
もはやそういうカテゴリといっていい人気のラーメン店もあります。
年代によってはやはりアレ、あの川は「揚子江」なので…
ですから、
揚子江と長江は同じか?と戸惑う人が現れるわけですね。
揚子江が長江の一部分ということなら、
やはり長江と呼ぶに、理はありそうです。
以上、長江についてでした。