「にほん」それとも、「にっぽん」?
日本の「読み」は、どっちが正解なのか。
呼び方で違いはあるのか?
ホントのところを、由来を含めて解説します。
また、ニホンとニッポンのつく団体・会社名の比較。
日本をあらわす「にほん・にっぽん」以外の呼び方、古称、別称、異称、美称を紹介します。
正式にはどちらが正解?国の見解
「ニホン」か「ニッポン」か。
どちらの発音が正しいのか。
どちらか一方を統一するのは不可能。
よって、どちらでも可。
「どちらの読みでもOK」が答えです。
1934年(昭和9)に日本を「ニッポン」とすると、
当時の文部省の呼称統一案を決議しましたが、
政府採択には至りませんでした。
2009年麻生内閣において、ニホンとニッポンの2つの呼び方が、
「広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はない」
と答弁することが閣議決定されています。
「どちらでもよい」が国の機関で正式決定されました。
身近なものに使い分けルールはあるのか
国語の教科書
国語の教科書では「日本」の読み方を1つに定めていません。
NHK
NHKでは、正式な国号として発音する場合「にっぽん」と呼ぶように決めているそうです。
その他のケースでは、「にほん」もありなのだとか。
オリンピック
1912年のストックホルム・オリンピックでは、
「ニッポン」のアルファベット表記をプラカードに示しました。
日銀(日本銀行)
にちぎん、で済んでしまうので、正式にどちら?と聞かれるとええと…となるのが「日本銀行」。
日銀の場合、国際的な呼称は「にっぽん」で統一しています。
「にっぽんぎんこう」「にっぽんぎんこうけん」
日銀が2008年に開催した市民向けイベントで
当時の日銀総裁(白川方明氏・第30代)が、以下のように講演しています。
ところで、話を始める前に、日本銀行は、よく「にほんぎんこう」なのか「にっぽんぎんこう」なのかと訊ねられます。
お札にローマ字で「にっぽんぎんこう」と書いてありますように、正式には「にっぽんぎんこう」です。
私も国会などの場では、「にっぽんぎんこう」と力強く呼ぶようにしています。
日本銀行website 講演「日本銀行への招待」より引用
確かに、一万円札、五千円札、二千円札、千円札、
すべての裏面の上部分(上端)に「NIPPON]の表記がありました。
(硬貨には「NIPPON]「NIHON」の表記はありませんでした)
貨幣(硬貨)は、日本「政府」が発行しています。
日本郵便の「郵便切手」
同じように「NIPPON]と印刷されているのが、郵便切手。
日本は郵便業務の国際組織(UPU)に加盟していますので
日本の切手で、世界のほとんどの国に郵便物を送ることができます。
こちらも、国際的な「日本」の呼称は「にっぽん」といえるでしょう。
日本郵便も、正式名称は「にっぽんゆうびん」。
ただ「にほんゆうびん」でも通用しますので、こだわらなくてOKです。
切手への「NIPPON」の表記は1964年の東京オリンピックが契機となりました。
なぜ2つの読み方が存在するの?由来
奈良時代(7世紀後半)には、
国際的に「ニッポン(呉音)」や「ジッポン(漢音)」の読みがあったようです。
平仮名では「にほん」や平安時代の「ひのもと」とする和訳表現もありました。
安土桃山時代、ポルトガル人が編纂した日本語辞典には、
「ニッポン」「ニホン」「ジッポン」が記載されています。
対外的な場合や強調する場合は、「ニッポン」が使われていました。
「ニホン」という言い方は古くからあったそうですが、
普及したのは江戸時代から。
関東、江戸の人達の発声の仕方が大きな要因だとか。
「せっかちだから、言いやすかったから」とされています。
今の日本人が発音する「は行」音は、江戸時代の頃から出来上がったものです。
奈良時代や平安時代の「は行」は、もっと違った発音をしていました。
おそらく「パァピィプペェポォ」や「ファフィフフェフォ」にちかい音だったとする
研究があります。
日本人にとって、「日本」の読み方が2つあるのは遠い昔からのことなのです。
とっても年季の入った「読み方」なんですね。
いまの日本人にとって「日本」を発音するとき、
圧倒的に「ニホン」が言いやすいようです。
国立国語研究所の調査データ(日本語話し言葉コーパス2004年度版)によると、
会話中の発音で「日本」を「ニホン」と発音した比率は96.2%
「日本人」だと「ニホン」が98.2%
「日本語」では、「ニホン」が99.5%
「日本代表」で「ニホン」が80.6%の割合で発音されました。
「ニホン」と「ニッポン」だと、「ニホン」と発音する比率が高いですね。
お札の不思議 ニッポン・
社会の「日本」名表記はどちら派?
社会一般では、「ニホン」と「ニッポン」表記はどちらが優勢でしょうか。
会社名を言葉にするときなどは、気を使いますよね。
| ニッポン NIPPON | ニホン NIHON |
| NHK | 日本大学 |
| 日本郵便 | 日本航空 |
| ニッポン放送 | 日本経済新聞 |
| 日本武道館 | 日本たばこ産業 |
| 全日本空輸 | JR東日本/西日本※ |
| 近畿日本鉄道 | 日本ユニシス |
| 西日本鉄道 | 日本相撲協会 |
| 日本体育大学 | 日本交通 |
| 日本郵便 | 日本オリンピック委員会 |
| 日本製鉄 | NTT東日本 |
| 日本電気 | NTT東日本/西日本※ |
| 日本電信電話 | 日本テレビ※ |
| 日本郵船 | 日本ガイシ※ |
| 日本通運 | NEXCO中日本/西日本※ |
| 日本水産 | 日本コカ・コーラ株式会社 |
| 日本ハム | 日本マクドナルド株式会社 |
| 日本維新の会 | 日本共産党 |
| 日本橋(大阪) | 日本橋(東京) |
| 大日本印刷 | 日本生命保険相互会社 |
※対外的には、NIPPONとする場合、両方の読みがある場合。
日本の他の呼び方は
あきつしま
「秋津(あきつ)」は、「とんぼ」のこと。
「秋津島」「秋津洲」あきつしま~「あきづ」とも呼ぶ。
初代神武天皇の巡幸の際に由来[『神武記』から]
孝安天皇の都の名「室秋津島宮」に由来とも。
「大倭豊秋津島」[『古事記』本州の別名として表記]
「大日本豊秋津洲」[『日本書紀』神代に表記]
あしはらなかつくに
「葦原」は、「豊かに葦の生い茂っている原」を意味する。
「中つ国(なかつくに)」は、高天原と黄泉の国の中間世界~日本のこと。
「葦原中国」(あしはらのなかつくに)[『古事記』、『日本書紀』神代]
「豊葦原(とよあしはら)」
「豊葦原中国」(とよあしはらなかつくに)
「豊葦原瑞穂国」(とよあしはらのみずほのくに)
- 神意によって稲が豊かに実り、栄える国の意(日本の美称)
「豊葦原之千秋長五百秋之水穂国(とよあしはらのちあきながいほあきのみずほのくに)」[『古事記』]
「豊葦原千五百秋瑞穂国(とよあしはらのちいほあきのみずほのくに)」
[『日本書紀』神代]
うらやすのくに
心安(うらやす)の国、心安らぐ平安の国。日本の美称、雅称。
「浦安国」[日本書紀・神武紀]
おおやしま
国生み神話に由来した古称、美称。
~イザナミノミコトが創造した八つの島の総称。
『古事記』では、淡路島・四国・隠岐・九州・壱岐・対馬・佐渡・本州の順に創られた。
「大八島」「太八島」
「大八洲」[『養老令』]
「大八洲国」[『日本書紀』神代]
くわしほこちたるくに
精巧な美しい武器(くわしほこ)がたくさん備わっている(ちだる)。
~立派な武器が多くある国。美称。
「細矛千足国」[日本書紀・神武紀]
しきしま
大和の別称。
「しきしま」は、欽明天皇の皇居「磯城島金刺宮」(奈良)に由来か。
「師木島」[『古事記』]
「磯城島」「志貴島」[『万葉集』]
「敷島」「式島」「城島」などの古称。
たまかきうちのくに
玉垣~皇居や神社を囲んだ垣、神社本殿の境界にめぐらした垣のこと。
「玉牆内国」[日本書紀・神武紀]
「玉垣内国」[『神皇正統記』]
ひのいづるところ
聖徳太子が遣隋使によって煬帝へ送った国書に「日出處」とある
日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙(つつが)無きや
「日出処」(隋書)
ひのもと
「日の本」「日の下」
別称、雅称。
ふそう
「扶桑」 中国の伝説にある東方のはてにある巨木(扶木、扶桑木、扶桑樹)から。
転じて日本でも「扶桑」「扶桑国」を使用。
ほつまのくに
整い優れた立派な国を意味する。
「磯輪上秀真国(しわかみの・ほつまのくに)」[日本書紀・神武紀]
みづほのくに
瑞穂~みずみずしい稲穂の実る。
「瑞穂国」
やまとのくに
大和国~元は、倭国、大養徳国、大倭国。
和州(わしゅう)、神国(しんこく)・神州が別称、美称。
まとめ
日本の呼び方~読み方はどちらでも、正解。
だけど、「にっぽん」の方がやや公式ぽい?
対外的に発音する時や、テレビでは「にっぽん」読みが、
優勢なんですね。
会社名だと、ニッポンの方が多かったです。
そして、最近は「にほん」と発音するのが圧倒的だとわかりました。
歴史的に古くから「にほん」と「にっぽん」の読み方があり、
同時に存在していたのでした。
どっち読みか?
まだ、論争は続きそうです。
日本という国名には、他にたくさんの別称、美称があります。
美しき稲穂が多く実る国、こころ安らかな国、
トンボだとか東方の巨木、優れた武器の国とおもしろいですね。
